Saturday, November 22, 2025
宝田時雄氏の語る統制経済
宝田時雄氏とは萬晩報の集まりでご一緒させていただきました。それ以来、さまざまな資料や講義録を送っていただいき個人的な相談にも乗ってもらったこともあります。今回はブログ「まほろばの泉」から印象に残ったコラムを紹介させていただきます。=======================
統制は專制と自由を綜合開顯せる指導精神であり、個々の自由創意を最高度に發揚するため必要最小限度の專制を加えることである。今日自由主義を標榜して國家の運營に成功しているのは、世界にアメリカだけである。
かつて自由主義の王者たりしイギリスさえ、既にイデオロギーによる統制主義國家となっている。しかして今やアメリカにおいても、政府の議會にたいする政治的比重がづつと加わり、最大の成長を遂げたる自由主義は、進んで驚くべき能率高き統制主義に進みつゝある。國内におけるニユー・デイール、國際的にはマーシヤル・プラン、更に最近に到つては全世界にわたる未開發地域援助方策等は、それ自身が大なる統制主義の發現に他ならぬ。その掲げるデモクラシーも、既にソ連の共産主義、ドイツのナチズムと同じきイデオロギー的色彩を帶びている。
かくしてアメリカまた、ソ連と世界的に對抗しつつ、實質は統制主義國家に変貌し來たのである。專制から自由へ、自由から統制への歩みこそ、近代社會の發展において否定すべからざる世界共通の傾向ということができる。
もしアメリカが日本を自由主義國家として立たしめんと欲するならば、日本の再建は遲々として進まず、アメリカの引上げはその希望に反して永く不可能となるであろう。しからば日本は結局、アメリカの部分的属領化せざるを得ず、兩國間の感情は著しく惡化する危險が多分にある。日本は今次の敗戰によって、世界に先驅けた平和憲法を制定したが、一歩獨立方式を誤れば、神聖なる新日本の意義は完全に失われてしまうであろう。
繰返して強調する、今日世界に自由主義國家はどこにもない。我等の尊敬するイギリスさえ統制主義國家となり、アメリカまた自由主義を標榜しつつ實質は大きく統制主義に飛躍しつつある。日本は世界の進運に從い、統制主義國家として新生してこそ過去に犯した世界平和攪亂の罪を正しく償い得るものである。
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