Wednesday, September 19, 2007

日本の米国病からの処方箋(金融)

会社のリストラには、大幅な人員削減だけでなく、残った従業員の格下げも含まれる。

ホワイトカラーの労働市場は、その日の仕事を求めて日雇い労務者が集まる職業安定所の様相を呈していた。

「ジャスト・イン・タイム」方式、つまり「必要な時に必要なだけ」という調達システムが、人間にも当てはまる時代なのだ。

(中略)キャリア志向の若者は、会社に頼らず独自の将来設計を考えた方がいい、と諭される。

他社からの誘いがあったり、今の会社から解雇されたりしても慌てないですむよう、いろいろな経験を積んだり、外部にコネを作っておくべきだ、というのである。

これから就職する若者へのアドバイスは、どんな勤め口も臨時のものと思え、ということだ。

ついこの間まで、会社は社員にとって家族のようなものだった。

移り変わりの激しい非情な社会にあって、確かな支えとなってくれる存在だった。よい仕事には収入よりも大切なものがあった。アイデンティティの源であり、長期的な価値のある人間関係の源でもあった。

(中略)ホワイーカラーの中流家庭のクレイグ・ミラーは、トランスワールド航空の板金工として働き、組合にも加入していた。時給は15ドル65セント(円相場120円と仮定すると1,878円)で年収は36,000ドル(円相場120円と仮定して4,320,000円以上)あった。

ガレージには二台の車、庭にはブランコがあり、アメリカンドリームを絵に描いたような中流家庭だった。

しかしミラーは、1992年の夏に突然解雇された。

今はマクドナルドのカウンター係とスクールバスの運転手をかけもちし、副業でボイラーのフィルター交換もやっている。スクールバスの仕事を終えて帰宅するのは午後五時だ。急いで夕食をすませると、妻は子どもの世話を夫に任せ、六時から深夜までトイザラスで在庫整理をする。彼女は、週に一日、夫と同じマクドナルドで働いている。

これらの収入を全部合わせても、18,000ドル(円相場120円と仮定して2,160,000円)にしかならない。将来の見通しは真っ暗だ。

ミラーと同時にトランスワールド航空から解雇された同僚の一人は、時給6ドル以上(円相場120円と仮定して720円)の仕事を見つけることができず、三十九歳で両親の家へ戻り、結婚や子どもを諦めることになった。別の同僚は管理人の仕事をしている。トランスワールド航空の組合によると、解雇された数百人のうち10人以上が自殺しているという。

まるで、大恐慌時代を彷彿とさせる話だ。

これでも昔ながらの指標に従えば「経済は安定している」ということになっている。

どれだけの金を生み出したかによって成否が決まる経済システムでは、人間は非効率の主因とされて、次々と切り捨てられていく。

金を動かす機関が世界を支配すれば、人間よりも金を重視するようになるのは避けられない。私たちは今、金に生活を搾取されつつあると言っていいだろう。

これほど徹底的に人間の営みを倒錯されるシステムを受け入れるのは、集団的自滅へ向かう狂気以外の何ものでもない。

(『グローバル経済という怪物』(デビット・コーテン著:西川潤監訳、桜井文訳より抜粋要約、シュプリンガーフェアクラーク東京)

金融ビックバンにともなう新会計基準の導入(退職給付会計等)、これにともなう団塊の世代を中心とした大量失業者および失われた世代(=就職超氷河期時代の文系の子弟)の発生。

団塊の世代および失われた世代の救済策としての新規公開企業の乱立、その結果としてあらわれた富裕層と貧困層の大きな格差。起業公開の礼賛によって、有名企業のブランドの屋台骨をきちんと支える人間がいなくなり 林檎の芯のように有名企業のブランドが崩れた。

 株式公開で濡れ手に粟の大金を手にした会社の幹部は社員の育成をおこたり、金銭面の格差だけでなく、人材の能力格差も生んでしまいました。

橋本治氏曰く「欲望を我慢することとは現在に抗する力である」。

セイの法則(=市場に供給した商品はすべて消化される)が機能を止めたと言いますが、現在の商品供給力を維持したまま、富裕層が昔ながらの質素な生活をおくり我慢することができれば、どれほどの多くの人々の命が救われ、世代間の格差(=コミュニケーションおよびテクノロジー面の)を解消することが出来るかを考えてしまいました。

どなたか統計資料を使って現在の全世界の生産能力で、贅沢をつつしめばどれくらい日本人の生活水準が下がるかを証明していただきたいものです。

日本は裕福な国です。これ以上の余分な需要の喚起は危険であると考えます。