Monday, June 09, 2008

「明治人の教養」(竹田篤司著:文春文庫)

小島政二郎氏の随筆「明治の人間」より、


《「明治の人達は、今の人のように遊んではいなかった。みんな勤勉だった。体の工合が悪くて一日仕事を休むと、「ああ、今日(こんにち)さまに済まないことをした」と口に出して後悔した。気に染まぬものを売ったりすると、「今日さまに済まない」と言って悔やんだものだ。みんな欲張らず、質素で倹約だった」》


《「私の父などは、私が紅茶を嗜むのを見て、「紳士の飲むものを、お前のような書生ッポまで飲んでいては先が思いやられる」そう言って、苦々しい顔をした。分を知れということを明治の大人達はやかましく言った。》


《思えば、私は仕合せな時代に育った。/(中略)/俗な言い方をすれば、お手本にしたくなるような人が、方々にいた。出入りの大工からも、私は私なりに教わることが多かった。そういうことは、楽しいことであった》



朧げながら、明治教養人山脈の背骨を見わたせる書。



大学生にお勧めの本。 小島政次郎、柳田国男、西田幾多郎、狩野直喜、河上肇、森外三郎、今西錦司、桑原武夫、狩野亨吉、ケーベル、夏目漱石、安倍能成、九鬼周造、天野貞祐、辰野隆、福原麟太郎の姿が垣間見えます。  



噛みしめて読んでみればみるほど、実に味わい深い文章が多々散りばめてあります。大学生・高校生にお勧めの書。