Tuesday, May 25, 2021

『赫奕たる逆光~私説・三島由紀夫~』(野坂昭如:文藝春秋)

三島由紀夫が非業の死を遂げて50年が経ちます。書店にも三島の特設コーナーが設けられ、今も衰えぬ人気がしのばれます。この三島フィーバーの要因はなんであるかと考えると、東大を出て大蔵省という経歴もさることながら、陸上自衛隊の市ヶ谷駐屯地での衝撃的な死を遂げた謎が、人々の俗物的な好奇心をそそるということもあるのだと思います。私もご多分に漏れず三島作品は『豊穣の海』4巻を読んだだけですが、三島に関する評伝は5冊ほど読みました。 父親の視点から三島の誕生から自決までを綴った『伜・三島由紀夫』(平岡梓)。『楡家の人々』の推薦文を書いてもらうなど三島の恩恵を受けた北杜夫氏の語る『人間とマンボウ』(北杜夫)。平岡定太郎、平岡梓、平岡公威と三代の官僚の血脈を語ることで三島の全体像に迫った『ペルソナ~三島由紀夫伝~』(猪瀬直樹)。『豊穣の海』を中心に新たな視点から三島文学をとらえた『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(橋本治)。 野坂昭如氏の『赫奕たる逆光~私説・三島由紀夫~』は、野坂家にかかってきた三島の日記を買わないかという一本の電話から始まります。 偶然にも、三島氏と同じような境遇(共に父の学歴が同じ)、家庭環境(三島はなつの養子で先祖は兵庫県印南郡の出身、野坂は張満谷家の養子で加古川出身)で生き、同時代を生きてきた野坂氏は自らの生い立ちを三島氏と交錯させ同時並行的に語っている。 野坂氏と三島氏が初めに出会ったのはブランズウィックというバーで、客と店員という関係であった。 「何日目かに、三人連れの三島がカウンターに座った。煙草をくわえ、ライターをしきりに鳴らすがつかない、ぼくがマッチの火を近づけると「ありがとう」明瞭な発音でいった」 (免責事項)  このブログは一般図書の一部を抜粋要約し、筆者の独断と偏見に基づき改編したものです。このブログで当該分野にご興味をもたれた方は図書館で借りる、ないしは書店にて本をお買い求めになり、全文を精読されることをお薦めします。

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