Friday, April 12, 2024

本屋大賞と津村記久子

2024年の本屋大賞は宮島未奈さんの「成瀬は天下をとりにいく」に決まった。昨年ほどではないが、今年もニュース7の最初のニュースに取りあげられ、芥川賞・直木賞を凌駕する勢いである。私はあまりニュースや新聞を見ないのでいちがいにいえないが、今年芥川賞を受賞した九江理江の「東京都同情塔」がフラッシュ・ニュース(15秒程度ではないか)に取り上げられただけでその違いは寂しい限りである。  今日の毎日新聞の社会面によると宮島未奈さんは静岡県富士市出身の大津市在住。今回の受賞作がデビュー作であるそうだ。しかしながら記事を読んでいると、宮島さんの紹介のつぎに毎日新聞で夕刊に連載されていた津村記久子さんの「水車小屋のネネ」は本屋大賞の第2位であった、という自社で連載した作品を少し紹介したいような不自然なコメントが付け加えてあった。そして総合面には「本屋大賞第2位」と銘打たれた大々的な本の広告があり、毎日新聞の連載小説である津村の作品ををおおいに買ってもらいたいという意図がみえる。  津村といえば「ポストライムの舟」という作品で芥川賞を受賞し、そんなに目立たない作品だったのでよくこんな地味な作品が選評者の眼にとまったものだと思ったものだが、新聞の連載が始まると、題名からして面白そうだと思い最初は熱心に読んでいた。また連載中に「やり直し世界文学」という本も刊行されこちらも面白そうなのでこちらもいつか買って読みたいと思った。津村記久子は今回の本屋大賞第2位に輝き、純文学のみならず直木賞的な作品も書けるフィールドの広さを認知させた。  最後に芥川賞だが、最近とみに世の中の世相の最先端(暗号資産だの生成AIだの)を取り上げた作品が受賞しているが、あまりにも直接的すぎて「時代にはその時代の精神なり情操があり」「それをくみ取ったものこそ時代が迎い入れられる」というのと少し違うような気がする。石原慎太郎氏は「最近の作品は市場マーケティングを綿密にした作品が受賞している」と言ったが、そういった傾向が芥川賞をしらけさせていると言えはしないか。

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