Tuesday, January 02, 2007

私の会計監査論(1)

 私は大学の卒業論文に「実態監査の必要性」のようなものを書きました。

 企業の財務情報だけに監査を限定する「情報監査」に向かいつつある会計監査の在り方に警鐘を鳴らした当時主流になりつつあった脇田良一教授の主張を簡潔にまとめただけのものです。


「財務諸表の作成の責任は企業にある」(*1)というのは自明のことです。


それが「公認会計士に摘発されなければ、適正な決算書なのだ」という誤った価値観が実業界に蔓延しているのも、問題であると思います。


会計士の責任は、その職務上必要とされる技術を用いて決算書の監査を行わなかった場合において過失を問われるものであり、組織的な粉飾に必ずしも対応できる訳ではありません。


まずは、経営者自身が企業が適正な財務諸表を作成し開示することは、利益をあげる以上に、優先順位の高い社会的責任であることを認識するべきであると思います。


そもそも「株主重視経営の原点」を考えていただきたいと思います。


人は事業を始めるときに、親しい友人や、考え方に共鳴してくれる人に出資してもらい事業を開始します。


したがって、自分がその一年間してきたことを報告し、客観的な数値である適正な決算書を提示し説明するのは、信頼してくれた人に対する恩返しでもあり、相互の信頼の証でもあるのです。


決して金銭的な報酬のみが信頼の証となるのではありません。


事業が悪化すれば正直にそれを報告し、それに対する打開策を株主に説明し納得してもらうのも、相互信頼の証であり、それが最も大切な株主とのあいだの絆であると考えます。


これが、私の会計監査論です。


ご静聴有難う御座いました。


(*1)
平成16年の証券取引法の改正で、違法行為に対する課徴金制度が導入されました。虚偽記載のある発行開示書類により有価証券の募集等を行った者には、違法行為による経済的利得を基準として算出される課徴金が課されます。
平成17年には継続開示書類の虚偽記載にも課徴金納付制度命令がくだされることになりました。

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