Saturday, November 08, 2008

「日本史を読む」(丸谷才一、山崎正和著:中央公論社)(前)

つらつらと自分の受けてきた中学、高校の歴史教育について考えてみますと、歴史科目として教えられてきた日本史、世界史の骨の部分については教わりましたが、その豊穣なる歴史の想像力の源となる肉の部分については教わってこなかったような気がします。


私は1990年に高等教育を受けました。


1985年から1990年代の世界情勢は東西冷戦、東欧の動乱に起因するベルリンの壁崩壊および東西冷戦崩壊、中国の天安門事件、湾岸戦争など、世界史の近現代史を語る上で最も重要な事項が生じ、社会科の先生にとっては腕の見せどころだったのでしょうが、教育界の要請があるためか、公立の世界史教育は中盤を長―く長―く語り、三学期には残念ながら時間切れで近現代史の説明はできません、というパターンであった。


辛うじて、予備校で世界史の近現代史を教えてもらったものの、余りにも対象が広すぎる故か、小難しい世界史の人物名、戦争名、条約名、年号を大量におぼえただけで、大学から入学許可証をいただいても、とても体系的に世界史を語ることなどできない状態。


この状態を作家塩野七生女史はこう語ります。


「ちなみに、一年間で世界中の歴史を教えなくてはならないという制約があるのはわかるが、日本で使われている高校生によれば、私がこの巻すべて(「ローマ人の物語」全16巻)を費やして書く内容は、次の五行でしかない」(「ローマ人の物語」「ハンニバル戦記(上)(塩野七生著)より抜粋引用)


「イタリア半島を統一した後、さらに海外進出をくわだてたローマは、地中海の制海権と商権をにぎっていたフェニキア人の植民地カルタゴと死活の闘争を演じた。これをポエニ戦役という。カルタゴを滅ぼして西地中海の覇権をにぎったローマは、東方では、マケドニアやギリシア諸都市をつぎつぎに征服し、さらにシリア王国を破って小アジアを支配下に収めた。こうして地中海はローマの内海となった」



そういった意味で私は、自己の人生を通して得た知識を自由自在に駆使する戦中、団塊の世代以前の戦後派との大いなるクレバスとコンプレックスを感じざるを得ません。


しかしながら、この本を読むと、この本を軸に他の文献を読みあされば戦後、全共闘以前の世代の方とも<文化的な日本史>を語ることができるのではないか、と思わせてくれるくらいエロティシズム(=知識への誘惑)にみちあふれた本です。


(本の内容の紹介は次回にさせていただきます)

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