Sunday, November 19, 2006

驟雨の時

ジリジリと照り付ける灼熱の太陽。白光りしてはるか彼方までそびえる石の階段。その階段のはてに白い入道雲がわきあがり、時折青い空がのぞいてみえる。

ロイド眼鏡をかけた中学生の兄とその友人のブーちゃんと呼ばれていた小林さん、そして虫捕り網を持った幼稚園児の私がゆっくりゆっくりと登ってゆく。天から降り注ぐような間断のない油蝉のジージーという鳴き声が降り注ぎ、階段の途上の杉にたかる白い斑点と黒い胴体を持つハンミョウムシの金属色の光沢が不気味にギラリと光る。

ハンミョウムシを捕まえようと、そおっと虫取り網を構えると兄から、
「コラッ。余計なことするな」
という叱責の声がとぶ。

これが尾道という街の名を聞いて、私が最初に思い浮かべるイメージである。

国民金融公庫に勤めていた父が東京から尾道へ転勤となったのは、私がようやく幼稚園に通いだした頃だった。

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