Thursday, April 13, 2023

『太陽の男 石原慎太郎伝』(猪瀬直樹:中央公論社)

私は石原慎太郎氏の円熟期の作品である「法華経を生きる」「弟」「わが人生の時の時」「聖餐」を読んだことがある。親戚が逗子に住んでいた頃があり、昔は夏場などに母方の親類が集まってこぞって海水浴にいったそうです。また石原氏は私の両親と同じ昭和一桁世代であるので、親から受け継いだ当時の時代認識や時代感覚を共有しているため物語にすぐに没入でき、懐かしい昭和の情景をそこはかとなく感じとれました。本編で意外に思ったのは、三島由紀夫氏が小説家として石原氏を強く意識し、いつか石原氏に追い越されるのではないか、という危機感があったという事です。私はこの評伝を読むまで小説家としては三島氏の方が断然上だと信じていましたが、どうもそのようではないようです。私は読んだことはありませんが、石原氏の中期に発表された「亀裂」という長編に触発されて三島氏が「鏡子の家」を書いたそうです。また、これは有名な話ですが、石原氏がベトナム戦争の取材の後ウィルス性肝炎にかかり入院したときに、三島氏から丁重な手紙がとどき、蘇生した石原氏は参議院に出馬する決心をかためたという話ものっています。石原氏の作家としての業績を再評価した作品。(免責事項)このブログは一般図書の一部を抜粋要約し、筆者の独断と偏見に基づき改編したものです。このブログで当該分野に興味をもたれた方は図書館で借りる、ないしは書店にて本をお買い求めになり、全文を精読されることをお薦めいたします。

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