Friday, April 07, 2023

回想の八木博氏(2)

しばらくして再び八木さんからメールが届いた。「京都の霊山神社にある坂本龍馬のお墓参りに参加しませんか」という内容で、なんでも東京でニュービジネス協議会が開催され参加者の中でから「幕末の怒涛のなかで新たなビジネスを切り開いた坂本龍馬にあやかるべく龍馬のお墓にお参りをして、これからの情報化時代の成功を祈願しよう」と発案する人がいて東京から15人ほどの龍馬フリークが京都に来るとのことだった。参加することを決め、当日待ち合わせ場所に行くと、40から50代の年長者ばかりで20代の私は龍馬墓参団のなかでは最年少でなんとなく面映ゆかった。八木さんが紹介してくれると、皆うやうやしく手をとって握手してくれた。霊山神社の学芸員が30分ほど龍馬の人となりを話し、龍馬と龍馬の傍らでひざまずく中岡慎太郎の像の横に龍馬墓参団の花束が山と積み上げられた。墓参りが終わるととあるスナックで懇親会がおこなわれた。高そうなスナックだったので「お金持ってないのですけど」と言うと「おう。心配するな、金のことは任せておけ」と胸を叩いて言った。恰幅がよく朗らかでたよりになりそうな人だったので、後で幹事の補佐をしている人に「あの人はどういう人なのですか」と尋ねると「Think Japanという団体を主宰している大塚寿昭さんです。ボスと呼ばれています。まあ、あの人の横にいれば、何故この人がボスと呼ばれるかすぐにわかりますよ」と言った。大手通信社の次長だという伴武澄さんの横に座った。最初は羨望の念からわざとそっけない態度をとっていたが、酒が入るとそういうわだかまりがとれて遠慮なく質問した。「主宰されているインターネットコラム萬晩報はどういう意図で始められたのですか」と問うと「管理職になると記事をかかなくてもよくなるのです。僕は生涯現役記者でいたいものですから」と答えた。私は女っ気なしの梁山泊のような男だけの世界がすっかり気に入ってしまった。二次会はおでん屋の屋台だった。二次会も宴たけなわとなった頃、八木さんが「土屋さん。飲んでますか」と声を掛けてきた。「これから皆で伴さんの住んでいる紫竹庵におじゃましようと思っているのだけど来ませんか」と言われ、あまりの僥倖に恐ろしくなって、化けの皮が剝がれるかもしれないと思い、それは固辞した。

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