Tuesday, April 03, 2007

東京アジア金融センター論(上)

知日家であるイギリスのエコノミストの対談、『日本の選択』(ビル・エモット、ピーター・タスカ著;講談社インターナショナル)を読んで、最も印象に残った箇所である。
 
「やはり、日本はアジアの国際金融センターにならないと、国際社会でのプレゼンスを保てないのか」

とため息混じりに思った。

しかしながら、タスカ氏の日本の最悪のシナリオである、

もし、アメリカがこう言いだしたらどうなるでしょう。「中東の混乱を収拾するには中国の力が必要だ。中国はイランを始めとする中東の産油国に大きな影響力を持っている。われわれには中国の力がどうしても必要だ。悪いが日本は独自の道を歩んでもらいたい」

という文章を読んで、改めて日米関係は日本が外交上、魅力的なカードを提示し続けない限り存続し得ないのだ、という現実に気が付かされた。

エモット氏によると、金融は日本の得意分野であるという。

日本人の平均的感覚からすると、農耕民族の日本人は狩猟民族の流れをくむアングロ・サクソンと比較して金融の能力に劣ると思っていたのだが、どうもそうでもないらしい。

タスカ氏は日本の東京はイギリスのシティのようになるべきだ、という。

規制をゆるやかにして、外国人の納税義務を出来るだけ軽くし、厳しい規制を逃れてきた海外の投資家を大量に受け入れ、東京だけを特別な都市に仕立て上げるべきだと論じる。

更には、イギリスで他国籍の人間がイギリスの企業を所有するといった“ウィンブルドン現象”に学ぶべきだと説く。企業の所有者が日本人でなくなっても拒否反応を起こさず、経営能力が優れていれば積極的に外国人に会社の運営を委託すべきだという。

私はここまで読み終えて、日本も一時のライブドア騒動や村上ファンド問題の頃のような弱肉強食の金融資本主義の仲間入りをしなければならないのか、と嘆息しましたが、近代金融資本主義というものは必ずしもそういうものではないと述べられています。

本書でも述べられているように、ドラッカーは世界の資本主義市場の行き着く先を“年金ファンド型社会主義”と規定しています。

エモット氏の意見を抜粋すると、

資本主義やM&Aは、汗をかかずに私腹を肥やすホリエモンのような個々のベンチャー・キャピタリストのためだけにあるのではありません。たとえば、投資家であると同時に、慈善家でもあるウォーレン・バフェットのように、人々の尊敬と崇拝の対象になる人もいます。

それでは、公平かつ開放的で、透明性の高いグローバルな市場を東京につくるにはどうしたらいいかと考えると、やはり株式市場で一歩先をゆく、アメリカを範にしたいと思います。

私はこの本の後に、SECの委員長として、株式市場の公平性と透明性を勝ち得たアーサー・レピット氏の体験を綴った『ウォール街の大罪』(日本経済新聞社)を読みました。

そこで、次回は「東京アジア金融センター論(下)」で、アメリカの証券市場の透明性を高め、個人投資家の利益を守った、レピット氏の株式市場におけるさまざまな改革の方策を紹介して、それを他山の石としたいと思います。

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